阿蘇カルデラスーパーマラソン 当日

しかし今回はちょっとしたトラブルの連続に見舞われた大会であった。
まず、今回はデジカメを携帯して走ろうと思ったのだが、肝心のSDカードを自宅PCに入れっ放しでカメラ容量足りなく断念。代わりに携帯を持って走ることにした。せっかくの阿蘇なのに、デジカメできれいな写真撮りたかった...

さて、ゴール地点からスタート地点の「ウイナス」まではバスで20分ほど。屋根つき施設内で荷物を預けたりストレッチしたりしてスタートを待つ。4時半からの開会式はスーツ姿のおえら方のスピーチが続いた後に代表選手が宣誓。スタート直前に明るくなってきて気温も低くない様子。天気は曇りで降水確率は低い。終日半袖Tシャツ1枚でいけそうだ。
朝5時を迎えて唐突にスタート! いきなり坂を上らされてびっくり。皆さんペース速いのはどのウルトラ大会でも同じこと。上って下って郊外へ出て行く。
10kmの通過が65分くらい。今回はタイムは狙わず(というか狙うコンディションにない)、せっかくの阿蘇のコースを時間かけてきつくない走りでゴールすることを目指していたが、基本はいつもどおり成り行きの走り。腕時計の表示が薄くて見づらいのだけが気になった。
途中からウルトラマラソン界では有名な巨人軍団のサイトーさんと併走させていただいた。あのパラソル帽子がトレードマークで、今年4月の雑誌「ランナーズ」にも掲載されていた方だ。走りながら帽子の秘密を教えていただいた。

  1. あのパラソル帽子はもともと釣り用のもの
  2. 今は日本では入手できず米国で売られている
  3. 今使っているのは数十個め?
  4. ヒモや頭にはめるプラスチック部分は自分で追加や補強している
  5. 傘と頭頂にすき間がある構造なので蒸れない。雨に強い。
  6. 強風に弱い

ウルトラはすでに100回以上完走されており、今年も2週間前に「えびすだいこく」、このあとは「サロマ湖」と、連続して大会に参加されている文字通りツワモノ。一緒に走れて光栄でした。
20kmの通過が2時間10分くらい。そろそろあの有名な山越えの坂、高森の峠が見えてきた。冊子によれば21.9km地点から24.4kmまでの3.5kmで500m強を上らされる。坂を仰ぎ見てあらためてその傾斜と長さに驚く。つづら折りになった坂道がはるか上まで続いており、ランナー達が黙々と歩いていく。走っている人はほぼ皆無。平らなところで少し小走りになる人を除けば、全員が歩いていた。皆、「無駄なあがきはしない。後半にスタミナ温存」といった戦術。それを見て思わず自分は走り始めてしまった。ひねくれ者の血が騒ぐ。数メートル走って歩いて、を繰り返してなんとか最高地点へ。途中、振り返ると眼下に広がる阿蘇の景色。それにしてもいっきに上ってきた。今までいくつかのウルトラに参戦したけど、まさしくこの坂が一番キツイと思う。やはりコースがキツイことで知られる野辺山や村岡はどうなんだろう?
上りきった後の景色がまた最高。靄のかかる山々がどこまでも続く。地元の中学生?の皆さんの叩く太鼓に応援されてまた走り始める。今回不参加のゼオン鉄人会Yさんに思わず感動を伝えるメールを送った。

上りきってから50.8km地点のレストステーションまでは正直印象が薄い。視界の広がらない狭い山道がくねくねと続く、アップダウンが際限なく続くボディブローのようなコース。記憶に残らない。
30kmの通過が3時間30分くらい。ここ10kmは80分を要した。50kmを6時間で走ろうと思っているので全然問題なし。
この大会は2.5kmおきに給水所が設けられており、他人よりよく水を飲むワタシとしては非常に助かる。おかげで前半は腰に付けたペットボトルに水を入れておく必要がなかった。私設エイドも結構あって、熊本県立大学のエイドではコーラをいただき、ミツバチの格好をしたお姉さんに励まされた楽しいエイドでした。そこに立ててあったノボリに描かれていたのが「挫折禁止」マーク。面白かったので思わず写真を撮ってしまった。

40kmの通過が4時間30分くらい、この10kmを60分でカバー。アップダウンは多いが結構快調に走れた。ここいらから調子が出て来た。水色のユニフォームがカッコいい「浦安ランナーズクラブ」の女性ランナーの方と併走させていただく。結構暑いのに手袋をされているのでその理由を尋ねたところ「怪我防止です。今朝もいきなりコケました」と、見ると膝から流血。それでもこのペースで走っているとはスゴイ。
42.195kmの通過が4時間45分くらい。併走させてもらったせいか、かなり速いペースで走り抜けた。45km地点で5時間5分くらい。ここで先に行かせていただいたが、第二トラブル発生。腕時計がバッテリー切れで完全にその機能を停止。画面にまったく何も映らなくなってしまった。これまでのタイムも失われたし、今が何時なのかもわからない。あわてて携帯を取り出して時間を確認、めんどくさいことになった。
50kmの通過が5時間32分42秒、これは完走証があるのでわかる。
50.8km地点の阿蘇市波野支所へ。ボランティアさんが着替えを渡してくれたがその必要はなさそうだ。エイドのそばを食べたら先行していたゼオン鉄人会Mさん発見。続けてM君もエイドに飛び込んできた。3人が集まった。ワタシは椅子にゆっくり腰掛けて、100円で買ってきたコーラを飲み干す。足の裏が痛いなぁ、と思って靴を脱いでくつろいでいたのだが、さてそろそろ、という段になって気が付いた。なんと靴にインナーソウルが入っていない。ソウルなしで走っていたのだ。そうか、前回の富士五湖が終わって久しぶりにまとめて靴を洗った際にソウルを入れ戻し忘れていたのだ。いやー、なんかこの靴、靴底薄いなあって思ってだんだよね。我ながらよくここまで走ってきた。でもこのサッカニーの靴もよくもってくれている。どうせならいっそゴールまで気付かなければ精神的ダメージなかったのだが、まあ、これが最大のトラブル。
ここは50kmレースのスタート地点でもあり、午前11時がそのスタート時間。せめてその前にスタートしてしまおう、ということで10時58分くらいに後半戦に突入開始。結局このエイドには20分くらい滞在した。しかしソウルの件はショックだった。
止まっていた50kmの先導車を追い越す。「初めて先導車を抜いた!」と言ったら沿道から笑われた。しばらくは3人で併走していたが、少しずつ先に行かせていただく。
100kmウルトラの一番キツイ区間は50−70kmだと思う。この区間を乗り切れれば残り30kmは気合いでなんとかなる。この20kmをいかにさりげなく、苦しさに気付かぬうちに走り切ってしまうかが完走の一つのコツだと思う。
60kmの通過が7時間5分くらい。65分/10km。細かく続くアップダウン、上りは数十メートル歩いて数十メートル走る、の繰り返し走法で乗り切る。暑くなってきたのでエイドでペットボトルに水を補充、こまめに水分補給、うなじやもも、膝に何度も何度もかける、オーバーヒート防止。各エイドに氷水が大量に準備されていたのが本当にありがたかった。さすが19回続いているだけはある、と感動した。
実は今回は初めてウルトラをタイツ無しで走ってみた。単なるランパンの方がぴったりしていなくて涼しいし、ポケットもあるので飴を入れやすい、これはとても便利だった。その分タイツの補助が無いのでどうなるかと思ったが今のところ影響はなさそうだ。
この10kmで50kmマラソンの人に相当追い抜かれた。当たり前のことなのだが、これだけの大人数に一度に抜かれる経験はそうそう無い、結構悔しい。かといって付いて行けるスピードなど無いし、無理すると自滅してしまう。下り坂だけは50kmランナーとガチンコ勝負したが、それ以外はおとなしく抜かれた。
70kmの通過が8時間10分くらい。65分/10kmのペースが続く。練習不足で体重オーバーのわりには結構走れている。歩きも入るが、「もうダメ、走れない」というトボトボ歩きではなく、あくまでも坂なので走らない大股歩きである。タイムは悪くなくコンディションもそんなに苦しくない。前半眠気が来たが、やはり周りがいるせいか後半は来なかった。
50kmランナーのうち何人かが早くもバテてきたのか、何人か抜き返すことが出来た。50kmと100kmを合わせると結構な人数が自分の前後を走っている。特に前に人数が多いのは走りやすい。追いかける対象があると気が紛れて疲れを感じづらくなる。そうやって幸運にも魔の区間を乗り切ることができた。
しかしこの大会に出てくるランナーはレベルが高かった。100kmランナーに関していえばトボトボ歩いている人はほとんどいない。そして何よりも皆さんエイドに長居をしない。75km前後だったと思うが、うどんのあったエイドで喜んで椅子に座ってうどんを食べ始めたのだが、他は誰も座ってうどんを食べない。パーッと駆けてきて、スルスルーっとうどんを食べて、ターっと走り去っていく。都会の立ち食いそば屋にいるサラリーマンもびっくりの素早さだ。この10kmで抜いたランナーにエイドでみんな抜き返された。少なくとも30人くらいには抜き返された、その間、約5分。まあ、ウルトラの楽しみ方はいろいろありますからね、いいんですよ、別に。
80kmの通過が9時間15分くらい。この10kmも50kmランナーのおかげで飽きずに走れた。そしていきなり第二の難所がやってくる。やまなみハイウェイを越えて阿蘇の外輪山を越えてカルデラ内を目指す草原コースだ。ここの坂も結構キツイ。

しかし走ってほぼ一気に上りきった。上ると広い牧場・草原の中を走るとっても気持ちの良いコース。しかし御他聞にもれずアップダウンが続く。そこもきつい上りは歩いて、ピークについたら走る、を繰り返した。ちょうど歩いていた50kmランナーの方に写真を撮っていただいた。単調な上り下りを終えて85km地点を通過。あと15kmだ。しかしここからまっすぐの長い砂利の上りが続く。気が滅入るコースだ。ほとんどの人が歩いているかトボトボ走りだ。そこに後ろから速いペースで50kmのランナーが来た。4歩に1回くらいの割り合いでリズミカルに「ハイ!」と声を出していた。それに押されるカタチで自分も走り始めた。掛け声があるので走りやすい、6分/kmかそれを切るくらいの速さか、案外速く走ってるつもりでもっと遅かったかも。とにかくどんどん周りのランナーを抜かす。ここに来てこのペースはキツイ、オーバー気味だが後ろの切れの良い声に押されて走れるから不思議だ。その方のおかげで滅入るような上りも一気に駆け上がることができた。上り切ったところでそのランナーの方に声をかけていただき、写真を撮ってもらった。ゼッケン5167の方。以前は100kmに出ていたそうだが最近はなかなか練習が出来ず、50kmを走っているとのこと。「ここからは一気に下ります。飛ばして下ると膝に来ますのでムリしないように」「ハイ」と答えて走り出すが、下りは付いていけず。こちらもそれなりにいいペースで走っているのだが、とにかくリズミカルな走りで速い。疲労をまったく感じさせない走りだ。かなりのエリートランナーでいらっしゃるのだろう。
エイドでやっと追い付いた。また写真を撮っていただき、足にしっかり水をかけて冷やしてまた走り出す。それにしてもすごい下り坂だ。普通の車は上れないだろう。今までこんな急な下り坂を走ったことがあっただろうか?伊豆大島ウルトラの下り、山頂からいっきに海岸まで下るルート、あれに匹敵する。下り坂の途中で立ち止まってしまっているランナーを何人も見る。太腿が限界なのだろう。こちらもキツイ。もう下りで飛ばせる余力は無い。
90kmの通過は携帯を取り出して見る余裕なし。
ブレーキがかかる走りで、なんとか、なんとか下界にたどりつく。92.5km地点を通過。ここでご家族と話すために立ち止まっていた5167さんにまた追い付くが、すぐにおいていかれる、もうついていけません。95km地点前後でとうとう歩きが入ってしまった。やっとのことでこのレースで初めてといえる平坦なコースに入ったのに、もう足が動かない。走り続けられません。少しずつ後続に追い抜かれていく。「もう、いいや。12時間は切れそうだし」と思っていたら、また5167さんから声をかけられた。さっきまた立ち止まって誰かと話している横を追い抜いたのだが、すぐに追い付かれた。「せっかくここまで来たんだから歩かない!」と、励まされ数十m走るも、もうムリ。あっというまにまたおいていかれた。
単調な水田コースをやっと抜けて街中へ。97.5km地点を過ぎる頃には見慣れた温泉のホテルが見えてきたが、本当に遠くに見える。な、ながい...最後のエイドを越えて左折、大きな道路の歩道をまっすぐ走る。道路の向かいにあるホテルの従業員さんが大きな声で応援してくれる。これで少し元気が出た。いったん抜かれたランナーを抜き返して最後の力を振り絞る。短距離走のつもりで走る。あと1.5km。やっとゴール地点の位置がわかった、あと1kmを切る。コーナーを右折してまっすぐ走る。数百mのストレートが長い。息が上がるがまさかここで誰かに抜かれては悔しすぎる。コーナーを右折して昨日受付したセンター敷地内に入る。数十m走ってアナウンサーの前を通り過ぎて右折、ゴールのアーチが視界に飛び込む。そのまま自分で拍手しながらゴール! やった、もう走らなくていいんだ。
タイムは、11時間26分26秒。

ゴールするとすぐさまボランティアさんがメダル、メダルケース、ポカリスエットを手渡してくれる。5167さんにお礼を言いたかったが見当たらなかった。もうとっくにゴールされたのだろう。フラフラの足取りで芝生まで歩いていってそのまま倒れ込んだ。しばらくの間、動けなかった。30分くらい休んで体が冷えてきてしまったので、よろよろと立ち上がり、あとは完走証と着替えを受け取って今度はしばらく室内で休んだ。
同じ鉄人会のメンバーは、というと、ワタシが休んでいる間にM君はゴールイン。人足お先にビールをいただいているところにメールが来てMさんも無事ゴール。残りはKさんだけだが、どこを走っているのか消息不明。18時を過ぎて残された時間はあと30分を切った。まさか収容されたのでは?でもゴール地点にはいない。いつものお得意のギリギリでのゴールを今回も見せてくれるのか。と思ったら案の定、残り10分でゴールに入ってきた。役者です。
ゴール後は近くにいらしたサイトーさんと一緒に写真撮影、次回8月の奥武蔵での再会を約束しました。

振り返ればとにかくキツいコースでした。「えちごくびきの」と雰囲気やコースが似ていると思う。山間コース、制限時間13時間半、エイドは充実している、応援が温かい、などの点において。
タイムに関していうと、自己ベストに次ぐ2番目の好記録だった。前半が5時間32分、後半が5時間53分なるも中間地点のエイドで20分くらい止まっていたことを考えると前後半イーブンペースをキープ出来た。最後の5kmで完全にへばったけど、後半ハイペースで走れた時間帯もあったのだから、それもまたよしとする。キツいコースでこれだけの結果が出せた要因を考えると、やはりレース中の気候が良かったことが挙げられると思う。ずっと薄曇りで直射日光に照らされることもなく、強風もなく、雨は85km過ぎてぽつぽつときたがすぐに止んでくれた。これが好天だったらこれだけの走りは出来なかっただろうし、リタイア数ももっと増えていただろうと思う。思えばウルトラ自己ベストの「いわて銀河」は前半雨であった。ワタシ自身、寒さにとても弱いとはいえ、やはり走るには気温は低いほうが好適なのだろう。
装備に関していえば、今回初めてタイツ無しで走ってみたが問題なく走り切れた。ただしタイツが原因だと思っていた股ずれはしっかり再発していた。ディクトンを塗って対処したつもりだったのだが。うなじ焼け防止に買ったフランクショーターのサンシェードは結構役立った。日焼け防止の役目を発揮する機会はなかったが、水に濡らすことでしばらくうなじを冷やすことが出来た。

時計は止まるわ、靴底入れ忘れるわ、とちょっとしたトラブルが続いたが、楽しく走って無事ゴールすることが出来た。天気のこともあって雄大阿蘇の景色を眺めることは出来なかったが十分満足しています。長く続いている大会だけあって、運営はスムーズだったと思う。給水所も入れるとエイドの数も多かった。私設エイドも充実していた。スイカは本当に美味しかった。欲を言えばチョコレートなど甘いものが早い時点で食べたかった。
大会関係者の皆様、お疲れ様でした。どうもありがとうございました。
次回出走するか? う〜ん、まずは出てない大会を優先するということで。